如月日記

二月に始めるから如月日記

『坊っちゃん』

 語るに値する仕事は成していないけれどそれでもなんとか一か月働いた。初任給もいただいた。所得税もしっかり天引きされている。

 勤労と納税の義務を果たす大人になれればそこそこ胸を張って生きていけると信じたい。後はまあ、女だからそのうち結婚して子供を持てと方々から言われるのだろうけど、それを考えるのはもう少し後でいいや。

 今日はここまで!

 昨日の私は、たった二日しか出勤しない来週の私に面倒そうな仕事を全て投げつけて帰ってきてしまった。伝家の宝刀「今日はここまで!」の発動である。そういうことなので、私は来週が怖い。

 昨日の帰り道、バスを乗り継ぐために駅構内を歩いていたら、サンダーバードの乗車案内が聞こえた。電車一本乗り継ぎなしで京都へ連れて行ってくれるなんて、なんて素晴らしい。吸い込まれるように改札の前へ行くと、この春から設置された真新しい自動改札機が私と京都の仲を引き裂く。もし仮にクレカを改札にかざすだけで自由席の切符の代わりになる時代が来たらたぶんカード破産するから、あまり時代が進まないで欲しい、と変なことを考えながらその場を離れた。

 大人しく構内を抜けて路線バスに乗り、『坊っちゃん』を読みながら帰路につく。坊っちゃん、主人公が二十三歳四か月と言っていた。もしかしてほぼ同い年だ。新卒の社会人一年目というのも同じだ。私は彼ほど気性が真っ直ぐではないけれど、今まさに改めてこの本を手に取って読んでみて良かったと思えた。