PCを新調した時の前後の話
大学入学以来使い続けていたPCが、愈々寿命尽きたような挙動を見せたため、潔く買い替えた。
十年選手の旧PCよ有り難う。ここに供養と謝意を述べ置く。卒論を書き上げ大学を卒業できたのはあなたのおかげ。廃棄物としてのPCの処分方法をまだ調べていないが、およそ複雑な気がして、きっと今暫く捨てられない。白い本体に、キーボードの側面に緑の差し色の走る、私好みのかわいいやつ。うまるちゃんのシールを張り付けたかわいいやつ。
しかしそのかわいい十年選手ったら、先週入手したばかりの宇多田ヒカルの『One Last Kiss』をCDドライブに入れた時に、読み込む音を一切立てず仕事をしなかったばかりか、極めて静かな空き家を思わせる静寂とともにCDを飲み込んだまま押しても引いても吐き出さなくなったので、こちらも静かに肝を冷やした。私の宇多田ヒカルを返してよ。心音だけがかしましく、表情筋も動かないまま、静かに焦ったあの先週の日曜日の夜。丁度それは、少し前のみずほ銀行のシステム障害により、顧客の通帳がATMに吸い込まれた侭返ってこなくなって困ってしまったという、あの悲しい、でも外野から見るとやや面白い報道によく似ていたように思う。当事者は気が気ではない。私の宇多田ヒカルを返してよ。
CDドライブはゼムクリップの尖った先で、まさにこういう時のための非常時の小さい孔を刺すと、まるで何も悪いことをしたことのない幼い子供のような素直さで開封され、宇多田ヒカルの『One Last Kiss』を返してくれたのであった。機械の寿命を感じた出来事であった。
お目見えした新しいやつにはCDドライブは内蔵していない。(今時は外付けが普通でそんなならしい。外付けのデバイスの色々あるのを見ると何故か「外部不経済」という単語が脳をよぎるのだけれども、たぶんあんまり意味はない。) 仲良く楽しく十年くらいは使えるといいなと思うけれど、PCの寿命って大体如何ほどなのだろう。長く使えるといいな。大事にしようと思う。
自炊めいた慎ましいマイブーム
最近自作するおみおつけが我ながらとても美味しい。おみおつけの具の解釈を自由にすべしと何かのテレビ番組で見聞きしたので、野菜や何やらとお気に入りのお麩やらで思い付きのままに拵える。お出汁とお味噌がいい味出してる。そのお出汁とお味噌を最近同時期に更新したものだから、どちらが際立っていい仕事しているのか判別できない。されど美味しい。嬉しい。楽しい。
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帰路に満月を見た。今日は一日中寒くて堪らなかったのに、冬の月らしからぬ色に明く光っていて、季節の変わっているのを感じた。
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帰路に満月を見た。
想像するに地獄の郊外はきっと年中こんな暑さで、しかし夜も月も無い。
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愛憎、憧憬、瞬き、刹那に、
拵えたとしても輪郭が壊れて
現と夢の間隙だけの浮遊体験
視線を捉うも透過しない音声
早急じゃないと消えてしまう
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台風、嵐の夜は気が滅入る。
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自分がいま独身貴族であることに気付いてから人生が割と楽しく思えてきた。